不整脈講座 不整脈ってなぁに?

心臓の病気について 不整脈

心房細動

日本医科大学循環器内科 宮内 靖史

1.心房細動とは

正常な心臓のリズムは、安静時に規則的に1分間で60回〜100回拍動します。しかし心房細動になると心房の拍動数は1分間で300回以上になり、心臓は速く不規則に拍動します。

心房細動は年齢が上がるにつれて発生率が高くなり、また女性よりも男性に多く発生します。日本では70万人以上が心房細動を持っていると推定されています。

心房細動は健康な方でも発生しますが、高血圧、糖尿病、心筋梗塞・弁膜症などの心臓病や慢性の肺疾患のある方は発生しやすく、またアルコールやカフェインの過剰摂取、睡眠不足、精神的ストレス時に発生しやすくなる方もいます。

心房細動自体は命に関わるような重症な不整脈ではありません。しかし動悸、息切れ、疲れやすいなどの症状が現れ、また脳梗塞の発生率が高くなるため適切な治療が必要です。

2.心房細動の症状

「どきどきする」、「胸が苦しい」、「階段や坂を上るのがきつい」、「息が切れやすい」、「疲れやすい」などの症状が多く、手首や頸部(首)の脈を計ると普段よりも速かったり、また速い・遅いを不規則に繰り返したりします。

全く症状がなく長い間にわたって気付かないこともあります。

3.心房細動の合併症

心房細動はリズムの不整(心臓の心拍数やリズムが一定でない状態)や頻脈(心拍数が高い状態)自体が命に関わることはほとんどありません。しかし、心拍数が高い状態が長く続くと、心臓の収縮機能が低下し心不全を引きおこすことがあります。また、心房細動中は心房の収縮が速く不規則なため、心房の中の血液の流れるスピードが低下しうっ滞(血液が上手に流れなくとどまってしまう状態)しています。

そのため血液が心房の中で固まりやすく血栓ができやすい状態となります。形成された血栓が血液とともに流れ、脳の血管に詰まってしまうと、脳梗塞を引き起こします。脳梗塞の15%が心房細動による血栓が原因です。また心不全、高血圧症、75歳以上、糖尿病、過去に脳梗塞をおこした方に多く発生します。

4.心房細動の診断

動悸や胸部症状(胸が苦しいなど)、脈の乱れなどの症状がある場合、診断のために以下のような検査が行われます。

●心電図
心臓の電気活動の記録です。数秒から数分の間の記録が可能です。
●ホルター心電図
携帯型の記録器に心電図電極を接続し、24時間分の心電図を記録します。
●携帯型心電図
おおよそ1ヵ月間にわたり携帯し、症状が生じた時に手もしくは胸部に圧着して自分で心電図を記録します。あとから医療機関で記録を分析します。
●イベントモニター
1週間にわたり装着し、症状のあった時にイベントボタンを押すことによりその前後の心電図を記録します。
●心臓超音波検査
心臓の形・大きさ・機能を評価するために行います。

▼経胸壁心臓超音波検査
標準的な検査法で簡便に行うことができます。胸部に特別なゼリーを塗って超音波走査機をあてて心臓の様子を観察します。

▼経食道心臓超音波検査
心臓の後ろを走行する食道に専用の超音波走査機を入れて心臓を観察します。喉の局所麻酔の他に、鎮静剤を投与して行うことがあります。左房や弁膜の詳細な観察が可能で、左房に血栓があるかどうかわかります。

●心臓CT検査
X線を用い心臓の詳細に断層写真を撮影しコンピューター処理により三次元的に表示します。カテーテルアブレーションをする方の左房や肺静脈の形・大きさの評価に適しています。
●心臓MRI検査
電磁波を使用してコンピュータ処理により心臓の断面を撮影します。また心臓の拍動の様子を動画で表示することもできます。

5.治療

ア) 治療の目的

@心臓を正常なリズムに戻して、それを保つ

心房細動から正常なリズムに戻すことによって、心房細動に伴う症状を消失させ、心臓の収縮力の低下や脳梗塞などの合併症を防ぐことができます。

A心房細動中の脈拍数をコントロールする

脈拍の速い心房細動を放置すると心臓のポンプとしての機能が弱くなることがあります。心房細動が続いていても薬により適正な脈拍数にコントロールすることによって合併症を防ぎ、症状を軽減することができます。

B脳梗塞などの血栓塞栓症の予防

心房細動による血栓形成を防いで脳梗塞などを予防するために、心房細動の患者さんの多くは他の治療とともに抗血栓薬での治療が行われます。

イ) 薬物療法

心臓の電気活動を抑制する抗不整脈薬は、心房細動を正常リズムを戻したり正常リズムを保つために用いられます。多くの種類があり、患者さんの状態により適切な薬剤が選択されます。しかし抗不整脈薬により完全に心房細動が予防される方や効果のえられない方もいます。抗不整脈薬の効果や副作用は患者さんによりさまざまです。

また、抗不整脈薬として用いられるβ遮断薬・カルシウム拮抗薬は心房細動による電気興奮が心室(ポンプ)に伝わる頻度を減らし、心房細動の脈拍数を低下させます。

ウ) 抗凝固療法

血栓の形成を抑制する薬剤を用いた治療です。従来から用いられているワルファリンは血液の凝固に必要なビタミンKを減らすことによって血栓ができるのを抑えます。薬の必要量には個人差があり、また他の薬剤や食事の内容に影響されるため、適正な量を決めるために受診の度に血液検査を行う必要があります。

また、ビタミンKを多く含む納豆や青汁、クロレラといった食品を食べると薬が効かなくなります。最近では、そのような食事制限の必要のない抗凝固薬も使用できるようになっています。

エ) 電気的除細動

胸部の2ヵ所に金属のパドルまたは電気を通すパッチを張って直流通電を行い、心臓のリズムを正常に戻す治療です。治療中に痛みを伴うため鎮静薬で眠った状態で行われます。正常リズムに戻せない場合や、一旦正常リズムとなっても心房細動が再発してしまう場合があります。

オ)カテーテルアブレーション

心房細動は、肺からの血液を左房に流す肺静脈という血管に発生した異常な電気が心房に伝わることが原因であることが多く、その異常な電気興奮が左房に入り込まないようにカテーテルで左房壁と肺静脈壁の接合部を焼灼することによって治療することができます。カテーテルは、足の付け根の血管に挿入し心臓まで進めます。この治療法は、原則として薬物療法に効果がなく、症状のある方に行われますが、それ以外でも治療の適応となることがあります。

カ) 外科手術(メイズ手術)

心房細動の原因となる高頻度の不規則な電気の流れを遮断して治療する方法です。胸部を開き心臓を切開・縫合しますので、カテーテルアブレーションを含めた他の治療法が無効な方や、弁膜症などの心臓疾患の手術を受ける方に行われます。